MAENORITY REPORT 2 |
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前のりティリポート2 by アーブ山口 |
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2003/11/30 |
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★プロローグ 以前アップした『前のりティリポート』は、コーナーリングスピード重視の極端な“うしろ乗り”ライダーにとっては、「ケンカを売っている」と思わせるシロモノだったようだ。 つまり、“うしろ乗り”ライダーは、私の文章を正しく理解したようなので、私は安堵の溜息をもらすと共に、再びペンを持つ、いや失礼、キーボードを叩くとしよう。 ★サンクチュアリ 世の中には、誰からも愛されるという素晴らしい人格を持った人が存在する。同じように、速く、安定していて、見かけもカッコの良い、コーナーリングスピード重視の“うしろ乗り”ライダーのライディングスタイルは、多くの人から愛されている。 しかし、人間世界の皮肉は、誰からも愛される人を“嫌う人”が存在することだ。 つまり私は、頭の位置が低く、腰がひけていて、一見アグレッシブに感じさせる、ヨーロピアンスタイルを元祖とする、コーナーリングスピード重視の“うしろ乗り”ライダーが嫌いである。正確には大嫌いである。 しかし、そうは言っても『前のりティ』のスタイルは、文字通りマイノリティなスタイルなので、これについて語る人は少ない。正確には皆無に等しい。こうした状況に対して歯がゆい気持ちを持つ私は、発行部数、広告主、株主に対する気遣い、部下に対する鼻の高さといったものとは無縁なので、“発信者負担にて”、国内のサーキットにおいて、サーカスのパレードよりも定着率の悪い『前のりティ』のスタイルについて語るとしよう。 さて、“うしろ乗り”ライダーの素晴らしい所は、ライディングフォームが美しく、大変アグレッシブに感じさせる所だが、『前のりティ』のコーナーリングフォームは、頭の位置も高く、素人の方達が見た場合、あまり美しいフォームとは言えない。 しかし、身だしなみに時間を取られ、デートに遅刻したという女性の言い訳は、「汚いよりもキレイな方がいいでしょ?」だが、ロードレースにおいては、美しさよりも勝敗が優先されるべきである。 そして、これこそが『前のりティ』の優位性な訳だが、尊敬すべき福田照男氏が語っているように、コース1周のラップタイムにおいては、アメリカンスタイルとヨーロピアンスタイルに大きな違いはない。しかし、アメリカンスタイル、そして『前のりティ』のスタイルは、「ラップタイムが速い」というよりかは、「レースに強い」という部分が特徴なのである。 そう、この特徴こそが、私が宝物のように大切にしている部分であり、中年ライダーにヒザを擦らせることについて語る人達には絶対に犯されたくない、『前のりティ』のサンクチュアリ(聖域)なのである。 |
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★伝統的な知恵 『前のりティ』のスタイルを実践している多くのライダーは、アメリカンやオージー(オーストラリア人)だが、これらのライダーは、ほぼ全員ダートトラックや、4サイクル大排気量車に乗って成長したライダーで、国産なのに『前のりティ』のスタイルにてプロのライダーである尊敬すべきノリックもまた、父親の英才教育にて、アメリカのダートトラックを学んでいた。 これに対して、我が国のコーナーリングスピード重視の“うしろ乗り”ライダーが多い現状に貢献しているオートバイは、若者からは“Nチビ”の愛称で親しまれている、NSR50だろう。 残念ながら、我が国には、ノリックの父親のように、最初からWGPの最高峰を意識して若いライダーを発掘育成するという人間は非常に少なく、多くのロードレースに関わるチームの長は、若いライダーをミニバイクレースから発掘育成するケースが多いが、これは専門バカが犯す古典的なヘマのひとつである。 しかし、上げ潮はどんな間抜けも乗せるように、ミニバイクレースでウデを磨いたというライダーは、我が国では雨後の竹の子のごとく現れ、結果、中小排気量のクラスでは、世界に通用するライダーを多く排出し、同時にホンダの株主の安眠にも多少は役に立った。 『前のりティ』がこれらのライダーを静観すれば、幸運であることは、賢明であることよりも素晴らしいことが理解できるが、皮肉なことに、NSR50で甘い汁を吸ったホンダが2ストを棺おけに放り込んだので、今後の4ストビッグバイクを中心としたロードレースを展望した場合、2スト小排気量車にこだわることは、つぶれる運命にある中小企業のワンマン社長のように、ただ単に頑迷である。 私からの、ロードレースを繁栄に導く責任のある立場にいる方に対する助言としては、今後、優秀なライダーを発掘育成する為には、伝統的な知恵を用いるべきである。もちろん、ここで言う伝統的な知恵とは、伝統を重んじ、知恵を軽んじることである。 ★80年代アメリカンライダー ご存知のように、サイズを小さくすることと、製品の価格を引き下げる天才である我が国の人間から見た場合、花瓶のようなコップでコーラをガブ飲みする、味覚後進国のアメリカでは、全てにおいてサイズの大きさが優先される風潮があり、国民性がNSR50を否定している。 彼らのもうひとつの特徴は、根っからエンターテーメントが好きだという気質であり、アメリカのロードレースの観客は、ヘルメットに取り付けられた突起物よりかは、オートバイがドリフトしたりウィリーしたりすることに多くの関心を寄せている。 こうした観客に応えるべく、ライダーはドリフトしたりウィリーしたりする4スト大排気量車を操るテクニックを磨くことになる訳だが、こうなると、あり余るパワーをどう使いこなすのかが最優先課題となり、タイヤのグリップ力を最大限に発揮し、コーナーリングスピードを高めることは二の次になる。 これがアメリカンスタイルの伝統であり、私が提唱するスタイルの極意である。 もちろん、中にはロードレースの伝統はヨーロッパであり、“田舎の草レース”を持ち込んだとも言えるアメリカンスタイルなど、ロードレースの伝統ではないという反論もあるだろう。しかし、私にとって良いニュースは、このような反論を持つ世代は、恐らく、アップデイトしなければ発病するというインターネットというシロモノに対して、サジを投げていると思われるので、(つまり、そんなことを言う輩は年寄りである)インターネットを使いこなす世代にとっては、こうした伝統を懐かしむ古い世代の人達のことは無視して差し支えないだろう。 私に言わせれば、ヨーロピアンスタイルの伝統など、すでにアメリカの犬に成り下がったにも関わらず、“グレート・ブリテン”(最高のイギリス)などと名乗る国のように滑稽なものである。 ★新しいトレンドにも合うアメリカンスタイル 好機はラベル付きではない。 従って、これを読む読者には、賢明な選択をして頂きたいが、ホンダが2ストを棺おけに放り込んだことで、マーケットの人気車種は、すでに4スト大排気量車に移行している。 もちろん、2スト中小排気量車を使い、コーナーリングスピードを高めるというスタイルのライダーにとっては、自らのスタイルを変更することは、ゴルフにおけるフォームを変えることと同じく、多大な努力を要すので、多くのライダーは、これまでのスタイルに固執することだろう。 しかし、巷にいる船は安全だが、それは船が本来造られた目的ではない。 サーキットを速く走りたいというシンプルな目標の為に、4スト大排気量車を速く走らせることに有効なアメリカンスタイル、しいては、コーナーリングスピードを高めることに全くと言っていい程関心の低い、『前のりティ』のスタイルは、サーキットにてラップタイムを縮めることにおいて、高価だが効果のない国内2輪専門誌を無視する賢明なライダーに向け、インターネットにて水面下で広めていくこととしよう。 もうあなたは、高い金を支払って、信じられない程単調なページデザインの国内2輪専門誌を読むべくマゾヒストになる必要はない。 タイヤの限界を超えて走るアメリカンスタイルにて、サディスティックにサーキットを攻めて頂きたい。 ★エピローグ ヨーロピアンスタイルに固執するライダーの心理的抵抗線を緩和するべく、はたまた、『前のりティ』のスタイルのライダーの笑いを誘うべく、相変らず文章を面白おかしくしようと、大袈裟な表現を使い、多くのページをさいてしまったが、これを読む読者は、肝心なライテクについて語られていないことに不満を感じていることだろう。 しかし、『前のりティ』のスタイルは、『ライクラ』誌が提唱するチキン(弱腰)なスタイルと違い、あまり気の利いた助言が用意できないことも、その特徴のひとつである。 もちろん、私自身が、文章表現という名の才能に恵まれていないことも大きな理由のひとつだが、人間というのは、読み書きという名の時代遅れの意思伝達手段にいつまでも縛られていることをぼやきつつ、もし、どうしても助言して欲しいという、今後、『前のりティ』のスタイルを実践したいというライダーに最後に助言させて頂ければ、その助言は次の一言に要約することができるだろう。 その助言とは、「案ずるより無茶をせよ」だ。 |
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