Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


アイ・ラブ・プチ株つみたて
2009年7月14日 11:51

 学者の提唱する“効率的市場論”によれば、企業の内在価値は常に株価に反映されるということだったが、今から20年も前の我が国のマーケット(株式市場)においては、こんな理屈は全く通らないどころか、海外の投資家がシッポを巻いて逃げてしまう程の投機的な場所でしかなかったようだ。

★野村證券
 今から20年も前は、一般庶民が株式投資をやることなどなく、株式投資は金持ちの道楽の一種に過ぎなかった。

 特に、株価を牛耳っていたのは野村證券で、野村證券の上層部が、「次はこの銘柄で行け」と営業マンに号令をかけると、営業マン達は資産家の奥さんとか金持ちの未亡人と言った優良な自分の顧客の元にすっとんで行き、「奥さん、この株は絶対に儲かりますよ」と耳打ちし、みんなが一斉に買うことで株価も上昇し、金持ちは更に金持ちになることが出来た。

 しかし、時々はマーケットが想定外の動きをすることもあり、野村證券が絶対という訳でもなく、たまには金持ちの奥さん方が損することもあったが、そんな事態が発生すると、金持ちの奥さん方は激怒して営業マンを呼び付け、「あなたが絶対に儲かると言ったから買ったのに、損したじゃないのよ! もう次からは別の証券会社にするわプンプ〜ン」とヒステリックにわめき散らすと、営業マンは優良な顧客を失わないようにする為に、「まーまー奥さん、そう怒らないでください、ちゃんと損失は当社で穴埋めしますから」と、金持ちの奥さん方の損失を肩代わりをした。

 これが悪名高い、かの有名な“損失補てん”である。

 このように、お金持ちは、株価が上昇すれば儲け、株価が下落しても損しないという恵まれた環境にあった訳だが、これではマーケットが健全に機能しているとはお世辞にも言えないという有り様だった。

★ネット証券
 こうした、証券会社がお金持ちしか相手にしなかった時代は、例えば100万円や200万円くらいの現金を持って証言会社の窓口に訪れても、その人はストレートにゴミ扱いされた。これが“ゴミ投資家”という蔑称の起源である。

 しかしその後、アメリカではチャールズ・シュワブ証券という証券会社が、インターネットを使った格安の手数料のビジネスで大成功し、程なくして、我が国にもネットで株を売買するシステムが出来あがり、ネット証券が乱立しだした。

 そうなると、これまでゴミ扱いされていた個人投資家も、ムカつく営業マンとはクチをきかずに格安な手数料で株を売買できるようになり、それと入れ替わるように、既存の証券会社の経営は苦しくなっていった。

 そう、もう野村證券の号令では株価が反応しなくなってきたのである。

★売買単位の壁
 しかし、株がネットで買いやすくなったとは言っても、アメリカと違って、日本にはまだ個人投資家にとっては厚い壁が存在していた。

 それが“売買単位”である。

 そう、以前であれば、大抵の企業は、売買単位を1000株単位にしていて、株価が1000円であれば、最低でも100万円は用意しなければ株が買えなかったのである。

 しかし、ネット証券は、この壁を壊すべく、“ミニ株”なる、通常の10分の1の売買数で株を買えるシステムを考え出したり、更には、企業側も個人投資家達の買い易さを考慮して、売買単位を引き下げ始めた。

 しかし、“1株”から買えるアメリカのマーケットに比べれば、まだまだ売買単位の壁は厚く、個人投資家がなかなか参入しずらいという状況が続いた。

★プチ株
 ミニ株は、購入しても実際には証券会社の名義だったが、そこにきて、カブドットコム証券が、アメリカのように1株から買え、更に名義も投資家自身の名義になるという、プチ株という商品を出してきた。

 これには私も驚いたが、このプチ株の登場により、実質的に売買単位は過去の遺物となり、それこそ株価が1円の株を1株だけ買うといった、ミクロ級のゴミ投資が出来るようになった。

★長期投資
 話変わって、例えば、株式投資に対する知識が全くないというズブの素人の方が、最初に株を買う時に心配になるのが、“売買のタイミング”だと思われるが、一般論として、株というのは、安値で買って、高値で売り抜ければ儲けられると考えられている。しかし、ビギナーにとっては、どこが安値で、どこが高値かなどよく分からないので、その部分が心配になるのは当然だと言える。

 そして、この株価が高いか安いかの分析に関して、大雑把に2つのやり方を紹介すると、株価の分析には、テクニカル分析とファンダメンタル分析の2種類があり、テクニカル分析とは、チャートを一生懸命眺めて株価を分析するやり方で、主に短期売買をする方達が愛用している手法である。

 これに対してファンダメンタル分析とは、企業の内在価値を計算して、その価格が現在の株価に対して割安か割高かを判断する手法で、主に長期投資家が愛用している手法である。

 しかし、マーケットに実際に参加している投資家の9割以上は、実際にはテクニカル分析を愛用している短期売買派で、代表的なのはデイトレーダーだが、以前記述した通り、デイトレーダーの8割から9割の人達は、実際には儲けを出していない。

 従って、これから株式投資を始めるというビギナーの方達が短期売買に手を出すと、短い期間の間に高い授業料を支払うハメになることが多い。

 しかし、短期売買というのは、そもそも投資ではなく投機だと言えるので、本当の意味での投資を目指すのなら、ビギナーほど長期投資に徹した方がよく、しかもその方がプロの投資家を上回るリターンを上げる可能性が高い。

 また、株式投資だけでアメリカで1番の資産家になったこともある、ウォーレン・バフェットのような、プロの長期投資家などは、もちろんプロなので、長期投資とは言っても、莫大な金額を使って株価が割安な時に一気に買いを入れるという手法を使うが、それはそれでプロの手法で、本業を持つ素人の人達が、買いのタイミングを見極めるのは非常に難しいと言える。

★ドル・コスト平均法



 こうした、買いタイミングの難しさに対してリスク分散できる手法が、ドル・コスト平均法である。

 ↑の図を見てもらえば分かる通り、1回限りの買い付けで、その時の株価が結果的に高かったのか安かったのかは、後にならないと分からないので、非常に博打的だが、かと言って、毎月同じ株数だけ買うのも、リスク分散としては少しマシではあるが、理論的に最もリスクが低く抑えられるのが、“定期定額買い”なのである。

 この、定期定額買いという手法だと、株価が高い時には少ない株数しか買えず、株価が低い時にはその逆で多くの株数が買え、平均すると、平均買い付け単価が安く抑えられるのである。

 しかし、この手法は、ドル・コスト平均法と呼ばれるように、1株から株が買えるアメリカでは有効な手法だったが、前述のように、売買単位の高かった我が国では、実質的に使えないという手法だったものの、プチ株というものが登場し、更には、このドル・コスト平均法そのまんまと言える、『プチ株つみたて』という商品が登場してからは、誰でも気軽にこのドル・コスト平均法のメリットが享受できるようになった。

★自動操縦
 プチ株つみたては、ドル・コスト平均法という、単に理論的に優位な面だけでなく、ビギナー投資家にとってありがたい面も別にある。

 それは、株の購入を自動操縦にすることが出来るという点で、自分が気に入った企業が見つかっても、その時点でまとまった現金を持っていないと、貯金が貯まるまで株の購入はお預けとなってしまうが、その間に株式投資に対する興味が薄れたり、あるいはせっかく見つけた株の株価がお金が貯まった頃に上昇して買えなくなってしまうということもある。

 しかし、プチ株つみたてで自動操縦にしておけば、毎月決まった日に1万円ずつから好きな金額に設定し、お金は銀行口座からの引き落としという設定にしておけば、文字通り銀行の積立のように、毎月定期定額買いを実行してくれるのだ。

 これにより、例えば本当に買い付けについてコロッと忘れて1年くらい経ってしまい、仮に途中で株価が急上昇していたとしても、定額買いなら、前述したように、株価が高い時には少しの株数しか買えないので、高値の株を沢山買ってしまっていたというリスクを回避することが出来、また、逆に途中で株価が下落してしまった場合には、“ナンピン買い”の効果が適用される。

 ちなみに、ナンピン買いとは、難を平にするという言葉の略称で、例えば1株1000円の株を10株で1万円分買った後、株価が500円に下がってしまったら、同じ1万円でこの時に20株買い増しすると、平均購入単価は666円となるので、ナンピン買いしなければ、株価が1000円に戻るまで含み益が出ないのに、ナンピン買いしておくと、株価が666円を越えれば含み益が出るので、株価下落は持ち株を増やすチャンスなのだと考える買い方である。

★割安株投資
 そういう私は、この手法をお勧めするだけあって、プチ株つみたての愛好家である。なんと言っても、少ない掛け金で色々な銘柄に分散投資が出来て、無理なく持ち株の保有数を増やしていけるので、プチ株つみたては大変ありがたい存在で、ちなみに、現在の私は、2銘柄を毎月1日、2銘柄を15日に買い付けするよう設定していて、4銘柄という銘柄のリスク分散と、月に2回という購入時期のリスク分散と、ドル・コスト平均法というリスク分散を組み合わせている。

 また、私自身、ごくまれにしか証券会社のHPにログインしないが、“買ったら売らない”という長期投資のスタイルなので、1度設定したら後はほったらかしというのも、本業がある人間にとっては気楽で良いと言える。

 しかし、肝心かなめの銘柄選択だが、企業の内在価値の計算や、経営者が株主重視の経営をしているかについては、少し時間をかけてじっくり選んだ方が良い。否、選ぶべきである。

 ちなみに、企業の内在価値など、ハッキリとした数値にして表わすことなどできないというのに、ある程度の数値を出さなければ購入の判断も出来ないということで、企業の内在価値の計算は、科学でありアートとも言える。

 そして、こうした作業は、数値を追いかけながらも、抽象的な概念も考慮しなければならない、レーシングメカニックの人達にも向いている作業なのではないかと、私は個人的には考えていて、キャスター角とかスイングアームの対地角とか、そうした数値を考慮しながら、「結局そのマシンは速いのか?」を常に自問自答するような感じで、売上や純利益や成長率などの数値を考慮しながら、「結局その会社は素晴らしいのか?」を考える株式投資は、そのプロセスがレーシングメカニックの仕事の進め方と非常に酷似しているので、華やかなライダーの世界に住む天才ライダーとは違い、地味な裏方に徹するレーシングメカニックの方などは、自分の才能を資産運用に生かすことで、天才ライダー達と資産運用版のウサギとカメのレースを楽しんでもらいたいとも思う。




「来週抽選が行われる宝くじと、少しずつ金持ちになるチャンス−人はたぶん、前者のほうに可能性を感じてしまうのでしょう」

「誰が素っ裸で泳いでいたかは、大波がひいて初めてわかるものです」

ウォーレン・バフェット




注:お決まりのフレーズですが、投資は自己責任で。


★参考
三菱東京UFJ銀行

カブドットコム証券




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