Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


自動車業界 2007年7月18日 17:04

 世界のホンダがご乱心である。
 ホンダが、子供だましの2足歩行で歩くロボットをつくり、このロボットよろしく、ホンダが文字通り足踏みしている間に、トヨタは販売台数で世界一となった。
 私はことあるごとに、自動車メーカーであるホンダが、金にならないロボットを作ったことをバカにしてきたが、現在では、すでに他のロボット愛好家達が2足歩行のロボットなど沢山作っており、その様子はテレビなどで皆さんもよく知っていることだろう。中には、1000万円程度の価格で、工業用に実用的なヒト型ロボットを販売するという会社まで現れているが、すでにヒト型ロボットは、ホンダの専売特許ではなく、アシモ君が足踏みするたびに、トヨタの株主達は、ハラを抱えてゲラゲラ笑っている。まったくバカげている。ロボットは、ロボットが好きな人達が生産し、販売するべきであり、自動車メーカーが手を出すべきカテゴリーではないのだ。
 しかし、バカげているのは、ロボットだけではない。ホンダは最近、ジェット機も作り始めた。なぜ自動車メーカーが飛行機を作らなければならないのだろうか? 最近私は、自動車、バイク、F−1、ジェット機、ロボットが登場するホンダのテレビCMを見た。つまり「我々は何でも屋だ」という訳である。バカげている。主婦達に、「マヨネーズはどこのブランドが好きか?」と聞けば、「キューピー」と答える。味の素とは答えない。理由を尋ねると、「キューピーはマヨネーズだけを作っているメーカーだが、味の素は何でも屋だからだ」と答える。
 「マヨネーズと自動車を一緒にするのはナンセンスだ」と、あなたは言うかもしれない、なるほど。では、自動車メーカーを見てみよう。ダイムラーは高級車を売り、クライスラーは大衆車を売っている。2つの企業が合併しても、相乗効果どころか、負の連鎖となった。そして、最近ダイムラーは、クライスラーを売却した。賢明である。
 トヨタを見てみよう。トヨタはあらゆるクルマを作っているが、フルラインの功罪に気付き、高級車はレクサスとして別ブランドにし、軽自動車はダイハツに任せ、自分達は株主におさまっている。賢明である。
 しかし、日本の自動車メーカーで、高級車ブランドとして最初に成功したのは、実はレクサスではなく、ホンダのアキュラである。しかし、レクサスがより高級な6気筒車と8気筒車に集中したのに対し、アキュラは4気筒車をラインナップして失敗した。(トヨタの株主は、この時もハラを抱えてゲラゲラ笑ったことだろう)ホンダが日本国内にアキュラの販売網を展開するのは、来年辺りだと思うが、4気筒車を売らないことを祈るばかりだ。

 現在、少し昔に成功したコングロマリット(複合企業体)は、どんどん業績が悪化し、専業メーカーの時代がやってきた。トヨタは自動車に特化し、莫大なキャッシュを稼ぎ出し、自動車業界のトップに躍り出た。
 他方、ホンダは、自動車以外のもの(それはジェット機だったりロボットだったり健康食品だったりした)に手を出し、百貨店への道を歩んでいる。こうした過程で、ホンダのブランドバリューは今後下がっていくことだろう。ソニーの二の舞である。
 そもそも、ホンダの強みとは何だったのだろうか? それは技術力である。では、ホンダの技術力はどうなっているのだろうか? 有名なシビックを見てみよう。20年前のシビックは、1リッター当たり21km走った。今年のシビックは、1リッター当たり15kmしか走らない。これだけ環境問題が騒がれ、ガソリン価格が上昇する中、シビックは20年前よりも燃費が悪化しているのである。これが本当に技術のホンダが作ったクルマなのだろうか?
 しかし、ホンダの社員は次のように反論するかもしれない。「燃費の悪化は、快適な居住性や走行性能を求める顧客のニーズに応えた結果だ」と、なるほど。では、逆に尋ねよう、いつ我々は2足歩行のロボットなどホンダに求めたのだろうか? いつ我々がジェット機などホンダに求めたのだろうか? いつ我々が健康食品(以下略)。
 ホンダについて語ると、無駄なトートロジー(同語反復)が増えて困るのだが、たしかに自動車が居住性を優先したりして車重が50kg重くなると、燃費が2%悪化する。しかし、それに挑戦したのがマツダであり、新型のデミオは、車体を軽量化することで、シビックのような形で、リッター23kmの低燃費を達成した。つまり、20年前のシビックよりも良い燃費で快適な居住性を達成したのは、自動車しか作っていないメーカーで、ロボットやジェット機を作るメーカーが足踏みしたり地に足がついていなかったりしている間に、マツダは顧客のニーズにしっかり応えた。エクセレントである。
 しかし、ホンダの社員は、またしても反論するかもしれない。「燃費を求める顧客には、ハイブリッドのシビックがある」と、なるほど。しかし、ハイブリッドのシビックがセールス的に成功しているとは思えない。ハイブリッドと言えば、トヨタのプリウスの代名詞であり、そのイメージは完全にプリウスに持っていかれている。ハリウッドスターは、自らのイメージアップにプリウスを使うが、ハイブリッドのシビックには乗らない。理由。見ている者が、普通のシビックかハイブリッドのシビックか見分けがつかないからである。しかし、プリウスならハイブリッドだと誰もが認めてくれる。ホンダはなぜシビックにハイブリッドエンジンなど載せたのだろうか? なぜハイブリッドしか搭載していない新しいクルマを作らなかったのだろうか? 理由。ホンダに戦略などないからである。

 このように、ホンダはアシモ君と共に足踏みをやめるべきだが、ホンダの社長はマーケティングのセンスが全くないようなので、今後もしばらくホンダの凋落は続くことだろう。
 という訳で、今回は自動車メーカーについて語ったが、次回はいよいよ2輪業界について語ってみるとしよう。




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