Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


多角化ならぬ多悪化 2005年3月1日 16:07

 まるで次の50年の業績の悪化を暗示させるかのように、ヤマハ発動機にバカな社長が就任した。

 皆さん御存知のように、ヤマハはバイクのメーカーとして誕生したが、現在では、事業を多角化し、船や産業用ロボット、ヘリコプターなどに事業を多角化している。そう、ピーター・リンチ氏言うところの、“多悪化”である。

 ヤマハに言わせれば、ヤマハの将来は、陸に海に空にと広がっているそうである。バカげている。
 私はこれまで、すでに陸空海に手を出している川崎重工に対して、バイクの部門はスピンオフするようにさんざん訴えてきたが、ヤマハの新しい社長は、この忠告を無視しているようである。
 そして、これまでの柱だったバイクにも力を入れ、電動車両やバイオ事業などの新しい事業も今後の成長の柱とするそうである。

 そううまくはいかない。

 以前にも記述した通り、水たまりを飛び越える時には、一気に飛び越えなければならない、二股をかける女性は、最後は泣くことになっている。シーソーは片方が上がれば、片方は下がる、両方上がると信じるのは、経営者の幻想である。
 しかし、そうは言っても、古今東西、歴史上のあらゆる経営者が、この“多悪化”のワナにハマっている。もちろんそれは、何らかのメリットがあるからだろう。そう、多角化ならぬ“多悪化”の最大のメリットは、経営者の無知を隠すことができることである。

 ヒューレット・パッカードのCEOに就任した、カーリー・フィオリーナは、コンパックを買収して、多角化を行うことで無知を隠したが、最近になって辞任したことで、マーケットはHPが本業にフォーカスし直すことを期待し、HPの株価は上昇した。
 株主に言わせれば、企業は、自分の行っている事業の内容を良く理解していれば、多角化など行わないものである。そう、自分の本業に特化して、誰にも負けない企業に育てることに集中するハズである。そして、実際に素晴らしいオートバイメーカーとなっているのが、何度も言うようだが、ハーレー・ダビッドソン社とドゥカティ社である。しかし、我が国のオートバイメーカーは、技術力があり過ぎるあまり、株主に配当金を支払ったり、自社株を買い戻して株主の持ち株の価値を高める努力をする代わりに、むこうみずな多角化に精を出し、本業をおろそかにしてしまうのが得意である。おごれる者久しからずだ。

 専門家からは反論もあるだろう。ヤマハのオートバイの売上は、アジアでは伸びているものの、国内、北米、ヨーロッパでは横ばいであり、すでに営業利益の70%は、船やバギーや産業用ロボットが上げているのである。
 つまりは、ヤマハが生き延びる為には、オートバイだけでは無理だという訳だ。
 では、いっそのことオートバイの生産などやめてしまってはどうだろうか? トヨタが織物の機械から自動車の生産にシフトしたように、オートバイの生産など、アジアの他の国に譲ってしまい、儲かる新しい事業に特化してはどうだろうか?
 しかし、人間は過去の栄光は捨てられないものである。
 そう、恐らく多くの読者は、私の意見はエキセントリック過ぎて、現実的ではないと考えることだろう。
 しかし、手前みそだが、それでは私の日記らしさが失われることだろう。私の日記の特徴とは何だろうか? 他人の目を気にせず、平気で他人を批判することだろうか? 「私は正しい、あなたは間違っている」というものの見方に執着するパラノイック(偏執質)さだろうか? インターネットの利便性である、わずらわしさのない匿名性に背を向け、自分自身をディスクロージャー(情報開示)していることだろうか? どれも正しいかもしれないが、私自身が心掛けていることは、一方的な批判ではなく、私は共産党とは違い、“代案”を出すことである。

 では、水たまりを一気に飛び越えた過去の成功例を出してみよう。それも、いつもの調子で、皆さんが良く知るメーカーの話である。
 それは、ヘルメットメーカーの『ベル』だ。特に、70年代アメリカンライダーが好きな方ならば、よく知っていることだろう。
 ベルは、皆さん御存知のように、以前はオートバイ専門のヘルメットメーカーだった。
 しかし、ベルは1991年にオートバイのヘルメットを売ることを一切やめた。キッパリやめた。
 ベルは、ヤマハと違って、水たまりの向こう側に一気に飛んだのである。ベルは次に何をしたか? ベルは、次には自転車用のヘルメットの販売に特化した。会長のテリー・リーは次のように語った。「我々のもっていたほんのわずかな経営資産を、もっとも効率的な方向に、徹底的にフォーカスしなければならなかった」
 ベルの売上は急上昇し、自転車のヘルメットのシェアの50%を奪うことに成功した。商売においては、10個のマーケットでそれぞれ5%づつシェアを取るよりも、1つのマーケットで50%のシェアを奪うことの方が圧倒的に優位である。ハーレー・ダビッドソン社は、日本人が勝手に名付けた“アメリカン”というタイプのオートバイのシェアの50%以上は奪っているだろう。ドゥカティ社は、4サイクル2気筒のロードスポーツタイプのオートバイのシェアの50%以上は奪っているだろう。これが価格決定力を強くすることに役立っている。
 日本のオートバイメーカーは何を作っているだろうか? それは、1400ccだったり、1200ccだったり、1000ccだったり、750ccだったり、600ccだったり、400ccだったり、250ccだったり、125ccだったり、100ccだったり、50ccだったり、スーパースポーツタイプだったり、ツーリングタイプだったり、アメリカンタイプだったり、オフロードタイプだったり、モタードタイプだったり、スクータータイプだったり、ビジネスタイプだったりするオートバイである。これを、3メーカーがそれぞれフルラインで作っている。カワサキは小さなスクーターを作っていないが、それ以前に、船や電車や飛行機を造っている。めまいがしそうだ。
 そしてヤマハも、陸空海に精を出すことにいそがしそうである。バカげている。
 そしてホンダは、ついにはロボットにまで手を出している。オメデタイ。

 ヤマハの新しい社長は語った。「目指すはニッチNo.1」。
 ニッチNo.1は、ハーレー・ダビッドソン社である。ドゥカティ社である。ホンダでもヤマハでもスズキでもカワサキでもない。ただし、ビリは分かっている。日本メーカーの後を追って自殺したアプリリアだ。

 なぜ日本のメーカーは何にでも手を出すのだろうか? 大して儲かりもしないようなモノにまで手を出し、本当に儲かっているモデルのブランドバリューをなぜ下げるのだろうか? そう、経営者にとっては、金が余ったからと言って、株主に配当金を支払うよりかは、何か作っている方が楽しいのだろう。株主軽視である。

 という訳で、これを読む皆さんには、雑草に水をやるような企業の株主にはならない方が良いと助言しておこう。

★追伸
 日記らしいことも書こう。昨日は、珍しくプライベートタイムを過ごしたのだが、2つの良いことがあった。ひとつは、確定申告を行ったことで、私は確定申告が大好きなので、良いことのひとつとしたい。えっ? 何々? なぜ確定申告が好きなのかって? それは、自分自身がサラリーマンではなく、税金対策ができる自営業者だと自覚できる瞬間だからである。サラリーマンは、給料から税金を引かれた、残りの額で生きていかなければならないが、自営業者は、稼ぎから経費を差し引いた、残りの金額に税金がかかるので、サラリーマンよりも圧倒的に有利である。という訳で、私にとって確定申告とは、「ムフフ」な出来事なのである。
 もうひとつの出来事は、ついに人生の目標であった、ハリウッドリメイクの『呪怨』を観たことである。私は大ファンの俊雄君と伽耶子さんに久々に会えたので、大変嬉しかったが、肝心の映画の方は、まるでジャッキー・チェン主演の映画のように、ハイライトシーンはほとんど予告編で観てしまっていたので、あまり感動はなかった。どうもオヤジ入ってからは、“期待の大きい映画はハズす”の原則が自分自身の中にあり、あまり映画を楽しめなくなっている。多分これはトシのせいだろう。
 ちなみに、映画などは、あくまでも他人の作ったものを受け止めるだけだが、先日愛車のホーネット600でスポーツ走行した際は、自分がオートバイをコントロールしている醍醐味に、“生きている証し”を感じた。
 という訳で、あまり壊れるところも無さそうな、BT014という安上がりなタイヤを履いたホーネット600でスポーツライディングするという趣味を持つことができたことの方が、本当に喜ぶべき出来事だが、これを読む読者で、私と一緒にスポーツライディングを楽しみたいという方は、是非一緒に走りたいと思う。そして、一緒に走ったあかつきには、あなたは『ミステリーサークル』の一員だ。(笑)そう、そして、ミステリーサークルは私を含めて、全員が幽霊部員ということにしよう。そうなれば、本当に“ミステリー”だ。(笑)




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