Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


「戦略か理念か」論 2008年3月14日 10:45

 『平和への道はない、平和が道である』にて私の友人が語ったように、左翼が絶対平和主義という訳でなく、歴史を観察すれば、左翼内の内ゲバにより、左翼の人達同士が殺し合ったりしたこともあるようだ。また、アメリカの左翼の人達は、右翼の人達から左翼と呼ばれることを嫌って、自分達のことをリベラルと言いだしたみたいだが、右派で保守の共和党に対してリベラルを自称する民主党も、大企業からの献金で成り立ち、結果的に大企業に有利に働くネオリベラリズム(新自由主義)的価値観を全否定できない弱さがあるので、私自身は自分を左翼だとかリベラルだとポジショニングしたくないと考えている。
 しかし、右翼の人達に言わせると、自分達はしっかり右翼だと表明するのに、左翼共は自分を左翼とは言わない傾向があると非難しているようだった。そこで、第3者が見れば左派的と言えるのに左派ではないとする私は、“プログレッシヴ”を名乗ることにしてみた。

 そんな私は、ヨーロッパや南米やアフリカなどの潮流を敏感に察知し、大企業の拡大志向を後押しするネオリベラリズム(新自由主義)を食い止めようと、アメリカに対してNoと言った国々の社会民主主義政策に興味を持った訳だが、いざ日本に存在する、そのままズバリの社民党などを観察すると、「私は大阪の商人の娘なので、資本主義も仕方ないと思っている」などと発言してしまう辻元清美など、党名とは裏原宿に、全然、社会民主主義など分かっていない人達が社民党員だったりと、お決まりの政治家の情けなさを感じてしまうが、以前レーシングマシンについて語った時のように、完璧か完璧でないかというよりかは、“完璧を目指す姿勢”を大事にすべく、政治に対しては、「より悪くない選択」をしていくしかないようだ。

★郵政解散選挙
 2005年に小泉純一郎が「民意を問う」として全く理不尽に解散した、いわゆる衆議院の“郵政解散選挙”当時、「JRもNTTも民営化したのだから郵便局も民営化する」などと、細木数子という占い師がうっかり未来の出来事に対して口を滑らせてしまった為、世の中は小泉フィーバーに熱狂し、結果的に自民党が勝ち、民主党は惨敗した。当時の『アーブの手紙』等を読み返すと、私自身、市場原理主義者らしく(笑)、郵便局の民営化にはほとんど興味がなかったようで、読者に対しては、NTTの時のように、仮に郵便局がガレージセールに出されても、うかつに株を買うべきではないなどと、主に投資家スタンスで語っているようだった。(笑)
 しかし、私自身は、自民党と民主党のマニフェストをフツーに冷厳に読んで、私自身は民主党員に投票していたが、私が投票した東京5区の手塚よしおは見事に落選していた。(笑)そして、その後の民主党は、党内で最右派の最悪とも言える前原誠司を党首にしたが、前原が党首になって喜んだのは、構造改革に賛成している電波芸者の田原総一郎くらいなものだった。

★ブッシュvsゴア選挙
 日本の国民が極端にネオリベラリズム(新自由主義)に賛同したのが2005年の衆議院選挙だった訳だが、この立役者だった小泉純一郎を担ぎあげた張本人はアメリカにいた。もちろんジョージ・W・ブッシュである。
 ちなみに、史上最悪とも言えるブッシュ政権が誕生したのが、2000年のアメリカ合衆国大統領選挙だ。
 この選挙でブッシュの対抗馬になったのは、現在、息子の薬物使用という「不都合な真実」が暴露されたアル・ゴアである。
 私は当時、アル・ゴアが大統領になった場合、日本にとっては脅威になると考えていたが、例えば、現在、私を含めた皆さんが利用している“インターネット”は、NTTが考えていた情報ハイウェイ構想が元ネタだったのだが、当時の通産省と郵政省がこの案をぶっ潰してしまったようだ。しかし、ゴアが日本にやってきた時に、この情報ハイウェイ構想の存在を知り、こんなものを日本にやられてはたまらないと、アメリカに帰ってから自国の技術者を集めて実用化に踏み切ったのが、国防総省が開発していたインターネットで、早く普及させる為に電話回線を使ったことで、これが現在のインターネットの元祖となった。

 私は、こんなしたたかでシャープな頭脳を持つゴアが大統領になったら、経済戦略上、日本は不利に陥ると当時思ったものだが、実際の歴史においては、超国籍企業と軍事産業の手先と言えるブッシュがイラク戦争をおっ始め、日本にもネオリベラリズム(新自由主義)を注入した為、今思い返せば、ゴアが大統領になっていれば、どれだけ人類は血を流さずにすんだのだろうと、憤りの気持ちは否めない。

 さて、これを読む皆さんも、この時のブッシュvsゴアの選挙について記憶されている方も多いかと思われるが、いわゆるフロリダ州の開票結果に対して、かなり怪しい疑惑が当時持ち上がったが、私自身、なんらかのインチキがあったと考えている。
 しかし、ゴア陣営は政治空白を嫌って、謙虚にブッシュに大統領の座を明け渡してしまったが、こうした目立った出来事以外にも、ゴアが票を落した要因があった。

★ラルフ・ネーダー
 アメリカの共和党と民主党も、共に大企業からの献金で成り立っている為、ストレートに企業を批判できないという弱さがある。日本においても、自民党と民主党は共に大企業からの献金で成り立っている為、アメリカと同じ状況になっている。
 しかし、アメリカでは、ストレートに企業を批判する100%正義にも感じられる、ラルフ・ネーダーというオッサンが存在する。

 しかし、このネーダーというオッサンが立候補したことで、反ブッシュ陣営は、ゴアとネーダーに投票する人で票が割れ、結果的にブッシュを推す結果となってしまった。つまり、戦術を優先するか理念を優先するかという難しい判断を有権者に迫ったことで、結果的に敗北した反ブッシュ陣営にとっては、この選挙は皮肉な教訓となった訳である。そして、こうした結果から、反ブッシュ陣営からは、ネーダーは融通が効かず聞き分けのない“理不尽な男”という汚名を着せられた。

 ちなみに、今年行われる大統領選挙においても、イラク戦争を引き起こしたブッシュ政権に対する批判が全世界的に巻き起こっている為、アメリカ人自身だけでなく、世界的にアメリカの民主党への支持が集まっているが、私自身、今回ばかりは、100年後までもアメリカ兵はイラクに駐留させるなどと語っている共和党のマケイン候補ではなく、また、イラク戦争を支持したこともある民主党のヒラリーでもなく、最初からイラク戦争に反対し、大統領就任後は16ヶ月以内にイラクからの撤退を表明しているバラク・オバマ候補を支持している。
 しかし、今回もまたラルフ・ネーダーは大統領選挙への立候補を表明したのだが、ヒラリーかオバマかは現時点で分からないものの、民主党の候補とネーダーが票を分けあって、結果的にマケインが大統領になることはなんとしてでも阻止したいと思われる。

 しかし、実際には、本当はどちらの候補が大統領に相応しいかと考えれば、企業批判が出来るネーダーだというのが本音であり、この、「戦略か理念か」論は、有権者にとって悩ましい問題だと言える。

★少数意見の吸い上げ
 では、ネーダーは本当にただの頑固者なのだろうか? 私が必ずしもそうとは思えないのは、ネーダーの次のセリフだ。

「ゴアが私に奪われた票よりも、私に対抗して企業批判を始め獲得した票の方が多かったはず」

「第3党は2級市民扱いです、でも奴隷制、婦人権、労働者などの問題は、第3党が社会正義を追及し、2大政党が採用して改善された」

 つまり、本当の正義を語る少数派が立候補し、その人達が少なからず票を集めれば、第1党や第2党もその意見に耳を傾けざるを得なくなるという訳である。

★小さな政府
 小泉純一郎と竹中平蔵は、大きな政府に反対し、小さな政府の実現を唱えた。国民の多くは、政治家というのは給料も高く、無駄に金を使う人達なので、政治家の数を減らしそうな小さな政府信仰は、望ましいものだと錯覚した。

 しかし、小さな政府の意味は政治家を減らすことではない。小さな政府とは、政府が市場に介入しないことを指しており、国営企業の民営化、規制の撤廃などを行う、つまりネオリベラリズム(新自由主義)を投入することを指している。しかし、小泉純一郎と竹中平蔵は、これまでの政府の失敗に対する国民の嫌悪感を利用することで、「小さな政府」というワンフレーズポリティクスは、絶対に国民にウケると考えた確信犯に感じられる。

 しかし、私自身は政府が市場に積極的に介入し、外資を規制するべきだと考えるに至ったので、もちろん大きな政府支持者である。
 また、私は政治家の人数も減らすべきではないと考えている。つまり、政治家のお給料やコストが高いので人数を減らすという発想ではなく、人数は増やしてお給料は減らすべきだと考えている。極論すれば、たった1人の高給取りの独裁者しか政治家がいない状態と、無給で働く国民全員が政治家の場合であれば、前者はファシズムで後者が究極の民主主義だと考えている。
 つまり、人数が少なくお給料が高いと、発想が金持ち目線になり既得権益を死守するという傾向になりやすいと思うが、逆に人数が多くてお給料が安いと、自然と庶民目線になり、多くの人の声が政治に反映されれば、格差は減り弱者救済傾向も高くなると思われる。

★選挙制度
 現在、我が国の衆議院の選挙方式は小選挙区比例代表制度を採用しているが、以前は中選挙区制度を採用していた。しかし、1つの選挙区に対して1人しか選出されない小選挙区制に対して、中選挙区制度は、同じ選挙区に同じ党から複数の候補が立つ為、政策や考え方には大差が生まれにくく、結果的に冠婚葬祭や地元への利益誘導などで当落が決まるという、つまり、金権や汚職や接待などの温床になりやすいという欠点が指摘され、更には、2大政党制が作りやすくなることから、政権交代の現実味が増すことが利点として、我が国は小選挙区制に移行したようだ。

 しかし、小選挙区制を採用した我が国に金権、汚職、接待がなくなることはなく、こうした指摘は机上の空論となった。

 また、たしかに政策転換のスピードはアップした訳だが、スピードのアップが必ずしも良いことには私には思えなかった。それが例の郵政解散選挙に如実に表れた訳だが、数字を使ってその理由を説明してみよう。小選挙区制では死票が多く、多様な民意が反映されない訳だが、2005年の郵政選挙では、衆議院の議席の73%を小泉自民党が獲得したが、小選挙区の得票では47.8%しか得票されておらず、投票率は67.5%だったので、郵政民営化は有権者の32.2%の支持しかなかったという結果で、オセロゲームみたく、これで一気に勝利にもっていかれるのであれば、「かなりやばい」と私は思うからである。

★第3党の弱体化
 私が小さい頃は、日本は自民党と社会党の2大政党が国会を牛耳っていた。しかし、社会党はその後社民党になり、メディアから“ただのおめでたいおばさん”のレッテルを貼られている福島瑞穂が党首になったことで、社民党はますます支持率が低下し、現在の党員の人数をみても、その人数の少なさには驚く次第だ。ちなみに、こうした、社民党や共産党員の人数の低下も、小選挙区制の影響であると思われる。

 ちなみに、中選挙区制であれば、ひとつの選挙区で沢山の政治家が当選する為、3番目や4番目の候補者も当選し、結果的に社民党員や共産党員も議席を確保しやすい。しかし、小選挙区制になったことで、自民党と民主党のガチンコバトルになった為、3番手や4番手は無視され、自民か民主の人気で議席の結果が大きく揺れるというのが日本の選挙の特徴となった。たしかにこれで政権交代の可能性も増した訳だが、政権交代も確かに大切なものの、交代した政権が元の政権と同じく企業献金で成り立っているのであれば、永遠に企業批判など生まれず、世の中は益々格差社会になりかねないと私は思う。

★リアリズム
 選挙制度が自分の思い通りにならないからといって、投票を辞退する訳にはいかない。特に私の選挙区には、古賀誠の陰謀で東京5区にやってきた、小泉チルドレンの佐藤ゆかりが立候補するからである。もちろん私は前回に引き続き、ネオリベラリズム(新自由主義)路線の佐藤ゆかりを落とすべく、別に大きな期待は寄せていない民主党の手塚よしおに投票するつもりだ。つまり、この文章自体が落選運動である。

 同様に、皆さんにも皆さんの政治に対する希望や要望があると思う。もしあなたがトヨタの奥田碩(おくだひろし)やキヤノンの御手洗冨士夫(みたらいふじお)なのであれば、全ての規制を撤廃し、世の中に市場原理主義を投入し、法人税を限りなくゼロに近づけ、底辺層の人達から労働力を搾取して自分達の既得権益を死守する意味でも、絶対に佐藤ゆかりや片山さつきのような小泉チルドレンに投票すべきである。また、こうした佐藤ゆかりや片山さつきのような小泉チルドレンを選挙で当選させやすくする為にも、こうした政治家のイメージが良くなる番組をテレビ局に作らせるよう電通を使って圧力をかけるべきである。また、仮に電通がそんなことは出来ないと言ってきた場合には、現在出している広告費を引き上げると軽く脅せば良い。

 しかし、もしあなたが私と同様に、将来的に格差が少なく、福祉や医療が充実していて、全員が中流意識を持った以前の日本のような社会主義的社会にすることで、多くの人達に将来不安がなくなり、経済的にも安定した社会となることを望むのであれば、100%正義だと感じられる政治家が現われるまで投票場には行かないという潔癖ぶりを示すよりかは、“落としたい”と感じる政治家が存在するだけで、あなたの投票行動は肯定化されると私は思う。

 つまり、100%パーペキに正義な立候補者がいたとしても、その人は現在の選挙制度では単に“理不尽な男”に過ぎず、現在の選挙制度においては、繰り返しになるが、まずは「より悪くない選択」をしていくしかないようだ。
 しかし、仮に落選確実なあなたにとって100%な候補者がいたとして、その人への投票も、間接的には決して無駄にはならないと信じたいのはやまやまだが、本当はそうした死票が生まれない為にも、世襲と官僚しか立候補すらできないという現在の小選挙区制は廃止し、中選挙区制の復活を切望したい。


「理不尽な男」  ラルフ・ネーダー(『デモクラシー・ナウ!』より)




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