Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


バブル崩壊後と明暗 2007年9月7日 20:03

 バブルが崩壊したのは、1990年である。私はこの年に2輪業界に足を踏み入れ、世の中は期を同じくしてデフレに突入した。
 では、バブル崩壊以後の自動二輪車の販売台数の変化を見てみよう。

 ホンダは、1990年に3万台を売った。15年後の2005年には、2万1000台を売り、販売台数は9000台減った。

 ヤマハは、1990年に1万8000台を売った。15年後の2005年には、1万4000台を売り、販売台数は4000台減った。

 スズキは、1990年に1万4000台を売った。15年後の2005年には、1万1000台を売り、販売台数は3000台減った。

 カワサキは、1990年に3万4000台を売った。15年後の2005年には、9000台を売り、販売台数は2万5000台減った。

 ハーレー・ダビッドソンは、1990年に3000台を売った。15年後の2005年には、1万2000台を売り、販売台数は9000台増えた。

1990年 2005年 増減
ホンダ 30000 21000 △9000
ヤマハ 18000 14000 △4000
スズキ 14000 11000 △3000
カワサキ 34000 9000 △25000
ハーレー 3000 12000 +9000

 御覧のように、250cc超のバイクの販売台数の増加においては、ハーレー・ダビッドソンの1人勝ちであり、国内メーカーはハーレー・ダビッドソンの前に敗北し、中でもカワサキは惨敗であった。
 この勝負は、一体どこで決まったのだろうか? 会社の規模だろうか? 否、ハーレー・ダビッドソンは最も小さなメーカーである。技術力の差だろうか? 否、技術力は国内メーカーの方が優れている。品質の差だろうか? 否、品質も国内メーカーの方が上である。価格の安さだろうか? 否、価格は国産車の方が安い。ラインナップの広さだろうか? 否、ラインナップはハーレー・ダビッドソンが1番狭い。それどころか、ハーレー・ダビッドソンは、750cc以下のカテゴリーを完全に放棄している。この勝負を決めたのは、集中の差である。
 ハーレー・ダビッドソンは、御存知のように、Vツインエンジンの大排気量車しか売っていない。そして、社員は全員、このVツインエンジンのバイクを売ることに集中している。

 惨敗したカワサキを見てみよう。カワサキは、1990年から2005年の15年間で、250cc超のバイクの販売台数を、なんと2万5000台も減らしてしまった。驚く無かれ、1990年には、あのホンダをも凌ぐ3万4000台も売っていたというのに、どうしてカワサキはここまで販売台数を減らしてしまったのだろうか?
 それは、カワサキは本来、典型的な重厚長大型な企業であり、川崎重工のHPを見ると、航空宇宙、鉄道車両、造船、エネルギー設備、産業機械、環境・リサイクル、インフラ整備に続き、モーターサイクル・ジェットスキー・ATVは、1番最後に紹介されている。つまり、バイクは会社の中で1番下に格付けされている。
 川崎重工にとって、バイクの販売は、片手間というよりかは、ほとんどボランティアに近い。しかし、上場している企業が非営利団体に近づくのは、株主に対する背徳である。

 「降伏は恥ではない」

 私が経営者に助言するとすれば、この一言だ。
 例えば、もしあなたがどこかの軍隊に所属していたとして、軍隊の隊長が、「我々は最後の一兵卒になるまで戦う」などとほざいたならば、あなたは時代錯誤もはなはだしいと感じることだろう。
 もちろん、カワサキの本社が硫黄島に建っていれば話は別だが。



 このように、飛行機、列車、船を作っている川重は、何かに集中しないことで利益率を下げていて、貧乏白人の溜まり場である、悪業先進国及び味覚後進国のアメリカで、300社もあったバイクメーカーの中で、Vツインのバイクで1903年から104年間も生き続けているハーレー・ダビッドソンが、我が国でも台頭してきたというのに、ホンダは飛行機を作り始め、川重に近づいた。バカげている。
 つまり、国内4メーカーは、バブル崩壊以後は、バイク以外の他のモノ造りに興味が移ると共に、バイクにおいては、店頭に並べておけば売れたバブルスタイルから脱皮できず、明確なブランドイメージの構築が出来なかった。

 私がカワサキに対して唯一褒めることがあるとすれば、カワサキはスクーターに対して手を出していないことである。
 えっ? 何々? エプシロンがあったって? まー、男カワサキも、エロい女がいればチラ見することもあるだろう。しかし、スズキとのバカげた提携を解消したことが、株主にとっては良いニュースとなった。

 話を戻して、もしカワサキが以前のシェアを取り戻したいのであれば、ブランドイメージを明確にすべきである。しかし、カワサキモータースジャパンのHPには、次のように書かれていた。

創業間もない頃からの長い歴史を誇るカワサキのモーターサイクルは、今では重量車・スポーツ車の代名詞として、世界で愛されるブランドとなりました。
高速クルージングを楽々とこなすスーパースポーツや、操縦する楽しみと所有する喜びを同時に満たす大排気量のネイキッドスポーツだけがカワサキではありません。エンジンやスタイリングの味わいを感じて欲しいシングルエンジンやツインエンジンのロードスポーツ、軽快さが信条のクォータースポーツ、大自然の懐をトレッキングするためのデュアルパーパスと、幅広いラインアップを誇るカワサキのモーターサイクル。
日常の足からロングツーリングのパートナー、そして自分のライフスタイルを代弁するアイテムと、多様なユーザーのニーズにお答えできる、個性豊かな商品群を、私たちはこれからも提供して行きます。


 フルラインのメーカーになりたいという悲願が、行間からひしひしと伝わってくる内容だ。しかし、私がイメージするカワサキのバイクとは、高速クルージングを楽々とこなすスーパースポーツや、操縦する楽しみと所有する喜びを同時に満たす大排気量のネイキッドスポーツだけがカワサキであり、もっと言えば、並列4気筒車だけがカワサキだと思う。しかし、なぜカワサキは、消費者にそう思われるのがイヤだとHPに書く必要があるのだろうか? フルラインでないと消費者にバカにされると心配しているのだろうか? しかし、消費者はフルラインであることなどほとんど気にしないどころか、むしろブランドイメージに対して極めて従順である。しかし、経営者がそれを忘れる。(カワサキのmotoGPマシンは、今年はマシンカラーを、伝統的なカワサキのイメージカラーであるライムグリーンからメタリックグリーンに変更したが、全世界のカワサキファンからのブーイングにより、シーズン半ばで元のライムグリーンに戻すハメになった)
 ハーレー・ダビッドソンは、750cc以上のバイクのシェアでは、すでにナンバー1であるが、ハーレー・ダビッドソンが多用なユーザーのニーズに応えたのだろうか? 答えはノーだ。ハーレー・ダビッドソンは、顧客にシンプルなイメージのバイクを提供し、他は全て無視することでシェアを伸ばしたのである。
 何度でも何度でも何度でも繰り返すが、私の提言のエッセンスは、シンプルさと集中である。私は国内メーカーが多悪化(多角化の蔑称)していることに我慢がならない。何にでも手を出して、かの有名なソニーショックの原因を作った、ソニーの元社長の出井氏や、現在のホンダの社長など、顔を見るだけで胸くそ悪くなる。
 例えば、皆さんはエンロンというアメリカの企業を御存知だろうか? この会社は、不正会計に手を染めて破綻した。
 しかし、メディアは不正会計にばかり注目したので、我々も単に不正会計が良くないという思考に留まってしまった。
 しかし、エンロンは、本来はただのパイプライン会社だったのに、電力のトレーディング、通信、天候デリバティブ、発電所の建設に多悪化した為に、莫大な損失を出し、結果、財務諸表に手を出すことになった。(カワサキが財務諸表に手を出さないことを祈るばかりだ)つまり、本質的な問題は、企業の多悪化である。



 もし、これを読む方の中で、上場したら外資に買収されて、莫大なキャッシュを手にしたとか、元々の資産家だとか、そうした人がいれば、どなたかカワサキモータースジャパンを買収して、カワサキを大排気量4気筒車に特化したメーカーに再建して頂きたいと切に思う。
 えっ? 何々? 4気筒車に特化して将来の成功が得られる保証はないって? なるほど、たしかに。
 では、あなたを納得させるだけの貧弱な理由を、今年の6月の自動二輪車の販売台数から考察してみよう。

順位 ホンダ ヤマハ スズキ カワサキ
1位 CB400SF 507 ドラッグスター400 223 GSX-R1000 141 Z1000 166
2位 CB1300SF 316 SR400 150 DR-Z400SM 91 ZZR1400 163
3位 CB750 180 FZ-1フェーザー 131 スカイウェイブ400 90 ゼファー750 149
4位 CBR600RR 177 ドラスタ1000 121 イントル400 77 W650 127
5位 CBR1000RR 162 YZF-R1 114 GSR400 70 W400 107

 国内メーカーの中で、最も自動二輪車を売ったのはホンダだが、ホンダは1位から5位までが全車並列4気筒車であり、全車伝統的なCBの名前が使われている。
 他のメーカーは、名前の統一感がなく、バイクの種類もごった煮である。カワサキは、なぜこの“男らしい”カテゴリーにおいてホンダに負けているのだろうか? それは、ホンダがCBにイメージを集中させているからであり、名前もシンプルだからである。つまり、CBのほうがよほど男らしい。(ボルドールという伝統的な名前の復活も最近のヒットの要因となった)
 ヤマハ、スズキは、ほとんど論外といった女々しいイメージのラインナップだが、カワサキは、ホンダを上回っていた1990年の販売台数が、現在まで激減してしまったのは、多様なユーザーに答えようとしたことが原因だったのだと、早く自己分析して頂きたいと思う。顧客に媚びるのは、女々しい者のやり方であり、カワサキが最も採用してはいけないマーケティング戦略だと思う。

★なぜホンダが金持ちでカワサキが貧乏なのか
 上記のくだりは短絡的だと見る識眼力のある方もいると思うので、あまり主観に偏らないフツーの意見も追記しよう。(こんな私でも、謙虚さで心を洗うこともあるのだ)
 カワサキが1990年の販売台数が好調だったのは、ゼファー400のヒットによるところが大きいだろう。しかし、現在ではこのミドルネイキッドのカテゴリーでは、ホンダのCB400SFが1人勝ちしている。また、兄貴分のカテゴリーである、リッターネイキッドですら、CB1300SFがZRXやゼファーを押しのけて1人勝ちしている。ちなみに、こうした、後から参入したホンダがパイを奪ってしまうという光景は、他のカテゴリーでも頻繁に目にすることができる。
 例えば、その昔、2サイクルクォーターのカテゴリーでは、RZ250がヒットし、2サイクルクォーターと言えば、ヤマハのイメージが強かったが、最終的にはホンダのNSRが勝者となった。ミニバイクレーサーも、最初のアイデアはヤマハのYSR50が元祖なのに、結果的にはNSR50が勝者となった。
 ビッグスクーターブームを作ったのも、ヤマハのマジェスティだが、今年の6月の販売台数では、フォルツァが1104台で、マジェは新型とあわせても519台しか売っていないどころか、スズキのスカブー(スカイウェイブ)は1007台と、スカブーの約半分しか売っていないと、とんだ体たらくだ。
 歴史に対する無心の探索を行なってみると、どうもホンダとヤマハは、マイクロソフトとアップルの関係に似たものを感じてしまう。
 アップルやヤマハは、この世に存在しない、バージョン1.0の開発は得意だが、それを改良して完璧な商品にする、バージョン2.0の取り組みに消極的な気がしてならない。対して、マイクロソフトやホンダは、基本的には猿真似だが、バージョン2.0の取り組みが得意な為に、結果的にシェアを奪ってしまっている気がする。
 カワサキがゼファー400で開拓した、ミドルネイキッドのカテゴリーも、最終的に信頼性の高い製品に仕上げたのは、絶えずマイナーチェンジを繰り返して熟成させたCB400SFだったし、フォルツァもそのひとつである。
 アップル教の信者は、マイクロソフトが死ぬ程嫌いだとは思うが、結果的に儲けているのはマイクロソフトであり、2輪業界ではホンダである。
 カワサキが顧客にコビを売って、Wシリーズなど開発して金を浪費するのであれば、ZRXやゼファーの開発費や販促費を増やし、そちらの販売を強化するべきだと私は思う。あるいは、Wシリーズで他社に対して側面攻撃をしかけるのであれば、私のロジックでは、いさぎよく4発は捨てるべきだが、カワサキがそれを狙ってゼファーをやめたとも思えない。
 また、世界的に高まる排ガス規制という、メーカーにとっての悪夢に対して、かの有名なポルシェですら、伝統的な空冷エンジンを棺おけに放り込んだというのに、カワサキはなぜ今になって空冷のWシリーズなどラインに乗せたのだろうか? もしかしたら、ヤマハのSRの売上を見てヨダレが止まらなくなったのかもしれないが、同じ伝統を売りにする戦略でも、単にカウルをつけてボルドールという名前を復活させただけで大儲けしたホンダと違い、ワザワザ新しいラインに投資したカワサキは、益々貧しくなった気がする。
 Wシリーズの誕生と共に引退したゼファー1100&750や、CBの対抗馬であるZRXのバージョン2.0の開発には、ほとんど消極的なカワサキは、新しいもので起死回生をかけたかったのかもしれないが、開発費をバージョン2.0に集中させたホンダは金持ちになり、バージョン1.0でラインを増やすカワサキは、益々ブランドイメージが曖昧になった。(噂によると、ZRX1200ですら絶版になる可能性があるらしい)
 今後空冷車が排ガス規制をクリアする為には、インジェクション化が避けられず、SRですら例外ではないと思われるのに、インジェクションが不似合いの懐古主義イメージのWシリーズの開発費や販促費にお金を使い、すでにGSXやXJRが試みている水で冷やさないエンジンのインジェクション化には金を使わず、せっかくネイキッド車にインジェクションという消費者の心理的抵抗線を他社が緩和したというのに、バイクそのものを売るのをやめてしまう消極的なカワサキに対して、ユーザーのカワサキ離れは今後更に加速するだろう。
 カワサキのイメージを代表するゼファーやZRXの販売の手を抜き、ZX-10R及びZX-6Rの人気が低迷する中、カワサキはWシリーズを投入したが、まるでホームレスが最後の持ち金を使い果たすかのように、カワサキはWシリーズの販促にはほとんど効果がないmotoGPへの参戦は続けている。

★バービー人形化したマジェスティ
 書いている内にネタが出来たので、マジェスティについても語ろう。
 ところで、バービー人形を販売しているマテル社は、ユーザーが勝手にバービーに手を加えることに対してヒステリックに反対し、スラップ(威嚇目的の戦略的訴訟)を乱用し、攻撃的な著作権及び登録商標権保護キャンペーンを展開し、バービーの改造は絶対に許さないという態度をとった。結果、世界中のバービーファンから反感を買い、バービーの売上は下がった。
 ヤマハは、若者の下品なマジェスティのカスタムに我慢がならなくなり、ビクスク(ビッグスクーター)をよりアダルトな層に売ろうと、デザインをオヤジくさくした。結果、たしかに若者がセレクトしなくなり、売上は低迷し、若者のカスタムを暗に認めているスカブーの方が売上が良くなった。
 どういう戦略をとろうがメーカーの自由だが、商品の使い方に対して、消費者に主導権を握らせないというスタンスは、結果的には消費者からそっぽを向かれてしまうようだ。まーたしかに若者の旧型のマジェスティのカスタムはお下品だったが、そんなことは気にせず商品の使い方やペルソナ(個性)やイメージに対して、消費者に主導権を握らせて成功したのがスカブーであり、ただただ使い勝手を良くしてバージョン2.0の開発に力を注いで、ビクスクをコモディティ(ありきたりな日用品)にしてシェアを拡大したのがホンダであり、ビクスク市場を傍観すると、バージョン1.0を作り出す意欲と、それに対するプライドの高さが、ヤマハの特徴である気がしてならない。その姿勢を賞賛するか、けなすかは、あなたがヤマハ信者かどうかで変化すると思う。

 えっ? 何々? 最後くらい得意の毒を吐けって? 分かったよ。私はクリエイティビティとかプライドとか、そうした金にならない価値観には興味がなく、自他共に認める拝金主義者なので、心底ヤマハが嫌いであり、ホンダが1番好きである。えっ? 何々? さっき社長の顔がどうたらとか言ってなかったかって? あーそうか。じゃーホンダも嫌い。
 えっ? 何々? ダブルスタンダード(二枚舌)はいいから、本心を聞かせろって? チミ達のリテラシー(読解力)には脱帽だよ。では正直に告白しよう。私は国内4メーカーが大嫌いだが、そこが作る並列4気筒車が心底好きであり、ハーレーのオーナーには会計士が多いとか、そんな統計は実はどうでもよく、ハーレーとかドカとか、そんなアングロサクソンチックな乗り物にイエローモンキーが乗るのは茶番だと思っており、カラード(有色人種)は4発に乗るのが相場と昔っから決まっているのだよ。だって考えてもみなさい、黒人がハーレーに乗ったり、プロゴルファーになったりすると思うかね? えっ? 何々? 最近は黒人もハーレーに乗るし、プロゴルファーにもなってるって? えっ、そうなの? 知らなかったよ。奴らも出世したなぁ。まー、世の中は広いので、そんな人もいるだろう。しかし、そんな一部の人は放っておいて、つまり、2輪業界を牛耳るギブ・ミー・チョコレート世代は、懐古主義を抱いたバカなのでアングロサクソンに憧れているだけで、我々バリ伝世代にとっては、やっぱバイクはインラインフォーの集合菅それっきゃねー、のだ。

 えっ? 何々? もちろん青い目のパツキンデルモはサイコーだよ。




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