Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


ブランド力 2005年12月17日 15:44

 インターネット上で公開している私の文章が誤読されていたとしても、私は文句はつけない。むしろそれは、リテラシー(読解力)の有る人と無い人の選別に役立っている。
 しかし、私の公開している文章に対して、最も重要な点が誤って解釈されているのならば、そこからは私にも文句がある。
 ナショナリズムを発揮することを許させてもらえれば、私は我が国が好きである。従って、我が国のオートバイメーカーにも、国益に沿った利益を上げて頂きたいと考えている。
 私が日本のメーカーをこき下ろし、ドゥカティやハーレー・ダビッドソンをベタ褒めしているのは、イタ公や青い目が好きだからではない。彼らが我々にないものを持っているからである。それはブランドである。

 ホンダは重い腰をようやく持ち上げた。来春より、国内の販売網を統合し、全ての車種を販売する『併売型』に移行するとして、株主をガッカリさせたホンダは、その1週間後に、2008年より高級車は『アキュラ』ブランドで販売すると発表した。『レクサス』に対抗し、高級車を売る為である。『レクサス』と『アキュラ』は成功するだろう。理由は、明らかに循環論法だが、失敗する理由がないからである。もし、失敗する理由をしいてあげるとすれば、北米においては、最初に成功した『アキュラ』が、後から参入した『レクサス』に負けた理由である、4気筒車のインテグラクラスの投入、及び、NSXの投入だろう。つまり、ラインを広げてブランドバリューを下げたのである。もしホンダがこれに学んでいるのであれば、『アキュラ』は、レジェンドクラスに特化して頂きたいと思う。4気筒クラスやスポーツカーのイメージは、高級車のブランドには必要ないのである。

 まー、とにもかくにも、時期が遅すぎた感は否めないが、トヨタとホンダは、フルラインの弊害について分かってきたのだろう。今後は、トヨタもホンダも、利益率の高い高級車にシフトし、中小型車はスピンオフしていくだろう。すでにダイハツなどは、軽自動車専門のメーカーだが、筆頭株主はトヨタである。トヨタは自前で軽自動車を販売しても、ブランドの低下につながるだけなので、こうした軽自動車専門のメーカーの株主でいるほうが都合がいいだろう。スズキがダイハツに負けない為には、今後より一層軽自動車にフォーカスする必要があるだろう。オートバイ部門は売却して、ただの株主になればいいだろう。同様に、ホンダ、ヤマハ、カワサキも、オートバイ部門を売却したほうがいいだろう。
 再三に渡って私が問題提起をしている、2輪業界を取り巻く根源的な問題は、正にこのことである。ETC問題、駐輪場問題などは、箇条書きの1行に過ぎない。2輪業界の最大の問題点は、オートバイの生産において世界一の国に、オートバイ専門のメーカーがないということである。どんなバカでも分かるように、行を空けて太字で記そう。

 我が国の2輪業界の最大の問題点は、オートバイの生産において世界一の国に、オートバイ専門のメーカーがないということである。

 企業が、自分の専門分野で戦わず、フルラインでシェアを拡大しようと考えると、ブランド力は失われ、商品はただのパリティ(ありきたりな)商品になる。企業が自分の専門分野に特化し、シンプルなラインでシェアよりも利益率を重視すると、そこにブランドが生まれる。
 前者はコモディティ企業であり、ブランドが企業名と同じたった場合は、後者はフランチャイズ企業になれる。
 フランチャイズ(経済的のれん代)企業は、“のれん”という付加価値をつけて商品を売るので、株主も安眠できる。例え、クソ重く安い鉄でフレームを作って、ピストンがたったの2個しかなく、オマケに遅くても、アルミフレームで気筒数が多い他メーカーよりも50%から、場合によっては100%も高いプレミアムを付加することに成功する。
 コモディティ(日用品)企業は、激しい価格競争にさらされ、価格の下落を止めることができないので、motoGPで優勝しても、顧客のニーズに応えようと、あらゆるエンジン形式のオートバイを販売し、あらゆるカラーバリエーションを用意しても、利益率は下がっていく。結果、株主はせっかく手にした配当金を、寝酒や睡眠薬の購入費用に回すハメになる。

 よ〜く考えれば分かることである。ドゥカティやハーレー・ダビッドソンが、そんなに素晴らしいオートバイなのだろうか? フレームは鉄で、ピストンも2個しかなく、とにかく遅い。しかし、この2社は、正にその部分にこだわることで、ブランドを築いている。
 ドゥカティとハーレー・ダビッドソンは、ラインがシンプルなので、利益率が高い。他方、日本のメーカーはラインが複雑で、利益率が低い。利益率が低いとは、どういう意味だろうか? 利益率が低いとは、労多くして報われないということである。あなたはラクして儲けたいだろうか? 私はラクして儲けたほうが良いと思う。
 『レクサス』に対して、多くの専門家は、ウラでは陰口を叩いている。それまで売っていたクルマが、名前が変わっただけで100万円も価格が高くなるのは、どう考えても不条理だという訳である。理論として正しいことが、現実ではまかり通らないのが世の中である。社内の会議で勝つものは、大抵は理論であるが、世の中で勝つのは現実である。

 世界には貧しい人達が沢山いる。そうした人が住む地域では、清潔な水にありつくことさえ出来ない。その結果、これらの国の人達は、水が原因の様々な病気で死亡する。しかし、こうした国に対して、清潔な水を供給しようという国際的なプログラムもあったが、資金難で頓挫したようだ。
 その一方で、フランスで湧き出る“ただの水”は、国際的なブランドとして先進国の人達に好んで飲まれている。

 我が国のオートバイメーカーも、ただの水をエビアンに変えて頂きたいと思う。




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