Erv's Letters index Text by Erv Yamaguchi


広告コピー 2005年3月18日 14:55

 「ダートを、街を、駆け抜けろ。」

 ホンダFTRの広告コピーである。どっちつかずだ。
 すでに『アーブの日記&手紙』の愛読者ならば、一笑に付してしまうコピーだろう。
 人間は複雑さを嫌う。逆に、シンプルで的を得た言葉は人間の心を動かす。女性を口説く時に使う言葉は、「君が好きだ」である。同様に、オートバイを売る時にも、シンプルで的を得た表現の方がいいだろう。
 スーパースポーツを売りたければ、「1番速いです」がいいだろう。「乗っていて楽しいです」などという軟弱なコピーでは失敗する。
 ビッグスクーターを売りたければ、「運転がラクです」がいいだろう。それ以外に何のメリットがあると言うんだい?
 同様に、FTRを売る際も、ターゲットを絞ったキャッチコピーがいいだろう。ダートと街では、欲張りすぎである。昔の格言を思い出せ。「2兎を追う者は、1兎も得ず」だ。

 分析してみよう。ホンダが「街を」というからには、何か下心があるのだろう。FTRを復刻したのは、実のところ、ストリートバイカー系のライダーが、流行り過ぎたTWに対抗して、中古のFTR250を見つけてきて乗っていたことに起因する。つまり、彼らはアマノジャクだ。
 このアマノジャクは、ホンダが新車でFTRを出した瞬間に、別のオートバイを物色したことだろう。つまり、ストリートバイカー系のライダーは、メーカーが本腰を入れると、“シラける”のである。メーカーの人間が読んでいるかもしれないので、もう1度繰り返そう。メーカーが本腰を入れると、“シラける”のである。
 つまり、↑の広告コピーで言えば、間違っても、「街を」などというおせっかいな言葉は禁物である。むしろ、ストリートライダーのことなど全く考えていないというイキフン(雰囲気)を醸し出した方が良い。カラーは伝統的なトリコロールのみで、本当にダートトラックを走る人達が満足するような硬派なオートバイを製造し、ストリートライダーの、「このオートバイをストリートでアレンジしたい」という心をくすぐるのである。さりげなく。
 「ダートを、街を、駆け抜けろ。」こんなコピーでは子供の仕事である。しかし、このコピーを作ったのは、小学校も卒業しているかどうか分らない、偉大なる本田宗一郎がつくったホンダに雇われた、いっぱしの大学出だろう。私が新しいホンダの社長ならば、どんな大学を出ていようが、こんなコピーライターはすぐにお払い箱にするが、こんな仕事に対して、株主の投資したお金を浪費するのならば、ホンダは株主軽視とも言える。よく考えてもらいたいものだ。

 では、我々がホンダに代わってFTRの広告コピーを考えてみよう。まず、FTRの最大の“売り”は何だろう? それは、ダートでタイヤを滑らすことが出来ることである。従って、もし私が新しいホンダの社長から、FTRの広告コピーの制作を依頼されたならば、私は次のような素晴らしいコピーを納品することだろう。

 「広告コピーまで滑りました。」




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